テープラッパー?

この野良猫、何軒かで餌をやっていることもあって数年前からうちの団地に住み着いている。顔はいかついが、なかなか可愛いやつで人懐っこい。うちの猫とも仲がよく、放浪癖のあるうちの白いやつともよくつるんでいる。グレーと呼んでいるけど片足がない。しかし貪欲に生きている。よく冬を越すもんだと思う。先日、毛布を入れた小さい家を作ったら入って寝ていた。ハックルベリーフィンみたいなやつだ。甘やかされて育ったうちの猫と必至に毎日を生きる野良猫グレー。世は不条理だ。

さて釣竿の話。前回登場したタッキングレジン。それはマンドレルという芯金にプリプレグを巻きつけるという工程で必要な接着剤の話しをしましたが、次の工程に必要なのがテープラッピングというマシン。テープラッパーと銘打ってますが、なんと呼べばよいのか分かりません。このマシンはマンドレルに巻きつけたプリプレグがオーブンで焼く際にバラけないためにシャフト状のプリプレグの表面にテープを巻き固定するというもの。テープもオーブンの最高設定温度の130℃に耐えうるポリプロピレン製のテープを使います。これには様々な厚みや幅がありマシンやカーボンと相性のよいサイズを選ばなくてはなりません。薄いと巻きつけ時に切れるし、厚いとシワになる。皆さんもカーボンロッドにシマシマの模様があるのを知っていますよね。実はあれがテーピングの跡なのです。オーブンでブランクを焼きあげた後にポリプロピレンテープを剝がします。その状態で製品にしたのがカムパネラで言えばCLシリーズですね。テープ跡のギザギザを削って塗装をかけたのが、EWやRWシリーズなどです。EWなどのように表面処理をしてもテーピングの模様は消えません。釣竿などにはユニディレクションという単一方向性のカーボンを使うので一直線上に伸びた超極細の炭素繊維にテープで押し付けられた部分がくぼみ、美しい模様となって現れるのです。石川

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こいつがグレー。愛想よく擦り寄ってくるが餌の催促はしない。餌にありつけるまで、ただ待つのみと礼儀は心得ている。

タッキングレジン?

あまり聞きなじみのない用語ですがブランクの製作に使用するいわゆる接着剤です。 前にお話したようにマンドレルと言われる芯金にプリプレグ(カーボンシート) を巻きつけるという竿の一般的な製法をシートワインディング製法と言うのですが、 マンドレルにプリプレグの一端を貼り付ける際に使用する接着剤をタッキングレジンと呼びます。

普通の接着剤と違うところはシートを巻き込む際にはがれない接着力が必要でありながら ブランクをオーブンで焼き上げた後にマンドレルから抜くことが出来るような、離型性も必要です。 はがれないこととはがしやすいこととは相反しますよね。簡単に言うと常温でベタベタしてオーブンで カチッと固まる性質の熱硬化性の樹脂が主成分で焼いた後はブランクに浸透します。

これはシートメーカーの配給により、成分や混合比などは社外秘です。これにロッドメーカーが硬化剤などを くわえたりしながら独自のタッキング法を確立しています。もちろんこれも各社マル秘ですから、 独自で技術を確立しなければなりません。いくらググっても出てきませんからね。

通常どのメーカーもマンドレルをタッキングレジンにドブ漬けして使用しますが、 かなり大量なレジンが付きますよね。これがすべてブランクに浸み込むわけです。 これをカムパネラでは10年前頃にレジンの塗布量を1/4以下に削減する方法を考え出しました。 このタッキングレジンは製造上必要なものですがブランク自体には不要なものです。 これでかなり軽くなりますよ。 まだまだ未開拓な炭素繊維の分野、面白い世界です。石川

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実家にあるCB125JXというバイク。弟いわくフルレストア済みとのこと。もとは私のだが、実家に置いていったら取られていた。

竿修理の話

秋の夜長、最近などは本を読まずしてYouTubeばかり眺めております。中でも好きな動画ですが・・・。フランス語で何言ってるのかよくわかりませんが、笑えます。

さて修理の話、ロッドの修理で一番多いのが、ティップの折れですが、紛失なども意外に多いものです。退渓してロッドを畳んで手に持つのはNGです。大抵スルッとティップなどが落ちてしまい、引き返して探す羽目に。しかも見つからないものです。ロッドを隠すなら森へって言うくらい見つからない・・・。車まではロッドは繋いだままかザックにしまう習慣にしましょう。ティップの折れなどはカムパネラロッドの場合はお送りいただければ現行モデルはブランクの在庫からですので一ヵ月以内でお送りできます。古いモデルも時間をいただければ作ることが出来ます。また継ぎ修理も出来ます。綺麗に折れてしまった場合は芯を入れて折れてしまったロッドを繋ぎます。しっかり機能しますが、本来ならば交換するのが望ましいですね。

他にも生産中止になってしまった他社製品のロッドも随分直しました。ちゃんと設計して作りますが、本来のアクションが分からない場合はこちらであわせたアクションになります。手持ちのマンドレルを使っての設計ですので、テーパーの大きく異なるものは難しいですね。

ティップ折れの修理の工程ですが、まずメールなどでお客様から状況をお聞きして、カムパネラまでロッド全てをお送りいただきます。入庫した時点で折れた部分や他のセクションを入念に点検。破断面や周辺の傷も確認します。バットエンドの傷からも状況を把握するのですね。ティップ折れでも他の部分が損傷している場合もあるからです。ほとんどの場合は新しいティップに交換です。他に気になる箇所などがあればお客様とご相談して合わせて修理します。お客様のフェルールに合わせてティップを切り出し、ガイドを取り付けます。ガイドのコーティングは三回に分けてしっかり塗り重ねます。この作業で3日間かかります。乾燥すれば完成です。後は出荷前に各部のチェック。不具合が出れば、また修理や修正になります。その後ロッドを洗浄剤で綺麗に。グリップも汚れを落とし、穴埋めを施します。ニッケルシルバーのリールシートは磨きなおし、ガンブルーに染めたものは染め直し。新品のように見違えます。全ての工程が済めばお客様にお送りできます。さらに折れたティップがまだショート(折れた部分からガイドつけた状態)しても使えそうなら、トップガイドを取り付けてスペアとしてお客様にお返ししています。ロッド折れてしまって痛い出費ですが、ほんのちょっと得した気分になりませんか。お客様の大切なロッドですからね。末永く使っていただけるのが、作り手としては嬉しいのです。石川